アスリートとして

アスリート

私は、フルマラソン、砂漠耐久マラソン、トライアスロンなどに挑戦し続けるアスリートでもあります。
今でこそそんな私ですが、実は開業してしばらくした頃の私は身長173㎝、体重76㎏で、食事内容・質を考えるどころか、食事を摂る時間も不規則でカロリーオーバー、また運動習慣は全くなく、生活習慣病まっしぐらの生活を送っていました。
その結果、案の定、尿管結石と痛風をほぼ同時に発症したのです。
そこに至って、私は健康的な生活を送るとともに、エネルギー豊かに毎日ハツラツと働きたいと強く思いました。なにしろ医者なのですから、医者が生活習慣病なんて論外だと思いました。

何事も目標が大事、まずは食生活、生活習慣を変え、フルマラソンを完走できるようになってみようと思いました。ランニングが嫌いでプロ野球の選手になるくらいの勢いで入った高校の野球部を辞めた私がです。自己啓発のための勉強をしていた私は、卓越した経営者の多くはマラソンなどの運動習慣を身に付けていることを知ったこともマラソンを走ってみようと思ったきっかけの一つだったかもしれません。
そして、マラソンを走るための練習時間を確保するためには、どう自分の時間を使えばいいか、考えて考えて考え抜き、試行錯誤を繰り返しました。初めは尊敬する時間管理の達人をTTP(徹底的にパクる)することを決めました。その達人こそ本田直之さんです。本田さんは日本とハワイのデュアルライフを満喫されているのですが、経営者でありワインソムリエ、そしてトライアスリートです。同じ人間でこれだけ多くのことをこなしているのは、何か秘訣があるに違いないと思い、本田さんの著書はすべて読破、マラソンだけでなくトライアスロンにも挑戦しようと決心しました。

トライアスロンへの挑戦

トライアスロンは肉体的なタフさばかりでなく、それ以上に精神的なタフさが求められます。例えば、最初のスイムで他の人のキックが頭にぶつかったり、泳いでいる最中に後ろから乗られて溺れそうになったり、あるいは女性に軽々と抜かれたり……。「俺は何でこんなことやっているんだろう」と思う瞬間が何度もあります。ですから、それに打つ勝つ精神力を培わなければトライアスロンは完走できません。強靭な精神力を培うことがトライアスロンに挑戦する価値なのだと思っています。
私が、本田直之さんに感化されてトライアスロンに挑戦しようと考えたのは2014年のことです。

当時、フルマラソンに備えてランニングは毎日の習慣にしていましたが、スイミングに関しては遠ざかることウン十年、泳げるには泳げましたが、何しろ自己流、50mくらい泳ぐと肩で息をするほどしんどい状態でした。
トライアスロンのオリンピックディスタンスは1.5㎞、自分の中に自分がそのような長距離を泳ぐというイメージすらできませんでした。しかし、あこがれの本田さんに近づきたかったので、コーチについて、トライアスロンで楽に泳げるトータル・イマージョン・スイミングという泳法を習いました。自宅近くにある市営プールで、定期的にパーソナルレッスンを受けたのです。とはいえトライアスロンのスイムは海や湖などの自然の中で行うので、プールで泳ぐようなわけにはいきません。寄せる波に勝てず、不本意な成績で終了してしまうこともありますが、今後もトライアスロン参加を継続していきたいですし、一緒に参加する仲間を募って、もっともっと楽しんでいきたいと思っています。

ゴビ砂漠マラソンへの挑戦

自分の限界を目指して

マラソンに関しては、練習を続ける中で、2016年、島根半島の東端にある美保神社(商売繁盛の神様)から西端にある出雲大社(縁結びの神様)を目指す「えびす・だいこくウルトラマラソン」に出場しました。当時の私は42.195㎞のフルマラソンは何回か完走したことはありましたが、1日に100㎞、しかも日本海を一望できる起伏に富んだコースを走るのですから、私にとってはとんでもないチャレンジでした。しかし、家族や友人、クリニックのスタッフに出場して完走すると公言してしまった以上、走り切らないわけにはいきません。自分を追い込むことに喜びを感じる何とも厄介な性格です。背水の陣で参加し、なんとか完走した後に湧いてきた想いは「自分の肉体的な限界はもっと上にあるのではないか、もっと過酷なレースにチャレンジしてみたい」というものでした。

次のチャレンジに想いを馳せていたちょうどその時、業種は異なりますが、目標を掲げて事業の発展を目指す経営者8人が一緒に食事をとる機会がありました。公私ともに充実している経営者同士の集まりだったのですが、話が進むにつれて偶然にもその8人の中の4人が砂漠マラソンを経験されていることが分かりました。
砂漠マラソンは、1週間で250㎞、砂漠を主な走路にしつつも、岩場や河川敷、草原などを通る道なき道を、旗を目印にひた走るものです。

しかも、運営側から支給されるのは水とお湯とテントだけで、1週間分の食糧や寝袋・着替えなどを合わせて10㎏以上の荷物を自分で担いで走るのです。
その場の話は大いに盛り上がり、私の中には、あの何とも厄介なチャレンジ精神がメラメラと沸き起こりました。それは私ばかりでなく、なんと未経験者の4人全員がその場の勢いで砂漠マラソンにエントリーすることを決めてしまったのです。私たちはそろってゴビ砂漠マラソンに挑戦することを約束しました。

不安と過酷な環境で得たもの

その時の私の不安は、競技の内容に関するものではなく、梅華会グループのクリニック全院を10日間、私抜きで運営しなければならないことでした。しかも、走る場所はゴビ砂漠、ネット環境は整っているはずはありません。クリニックに不測の事態があった時、私が居なくて大丈夫か……。否が応でもスタッフ一人ひとりが自分で考えて行動できるシステムをはじめとする、今までの運営方法が試される時がやってきました。今まで自分がやってきたことを信じて、出場までの準備期間は私が不在になる10日間の仕事の振り分けにフォーカスして行動しました。

さて結果は……。ゴビ砂漠マラソンは、留守をしっかり守ってくれたスタッフたちのおかげで無事完走できました。足にできたマメと脱水症との戦いに打ち勝ってゴールできたのは、目的を達成しようという強い気持ち以外の何物でもありません。そして、完走できたことには非常に大きな達成感と喜びがありました。足のマメはランニングシューズの選択に改良の余地がありましたし、脱水症は担ぐ荷物を軽くしたいという気持ちから、充分な水を携行しなかったとの反省がありました。

砂漠マラソンには、サハラ、ゴビ、アタカマ、南極の4つがあって、南極は他のいずれか2つを完走しないとエントリーさえできません。ゴビ砂漠マラソンを完走した翌年、私はアタカマ砂漠マラソンにも挑戦しました。前回の反省を生かし、はるかに良い成績で完走できました。

健康の定義

そして、マラソンやトライアスロンに備えた練習を続けているうちに、精神力が養われただけでなく、以前の生活習慣病はすっかり治り、体力も自然とついてきました。そのおかげで気力充実、普段の生活もエネルギッシュに送ることができるようになったと感じています。
私は、アメリカの経営コンサルタントのジェームス・スキナーさんが言っている「健康とは病気ではないということではなく、エネルギー豊かに生きることである」という健康の定義が好きです。体の調子を崩して来院される患者さんに対する医師としても、自分の持つエネルギーを高め、持てる力を出し切れる状態で過ごしたいと思っています。病気の人がいらっしゃるクリニックの経営者ですが、患者さんも健康になって、医者いらずになってほしい……そんな相反する想いに駆られています。